|
◆財政・年金・医療との一体改革を!
7月5日、郵政民営化法案が衆議院本会議を通過しました。与党自民党からは37人の反対と欠席・棄権14人の計51人の造反があり、賛成233票、反対228票の5票差の決着となりました。欠席・棄権の議員は、非公認という脅しに屈した事実上の「反対派」ですので、実質ベースでは、賛成が233票、反対が245票となり反対多数となります。
また、衆議院の審議では、当初の郵政民営化の最大の眼目であった「天下り特殊法人へのカネの流れ」も、財投改革と郵政公社で形式的には既に食い止められており、今民営化を急ぐ理由が乏しいことが明らかにされました。一方で巨大な郵貯や簡保が民営化されることで地域金融機関に深刻な影響を及ぼす可能性のある「民業圧迫」の問題も考慮されていません。一番驚いてしまうのは、民営化された郵政会社は、利益の挙がる都市部では郵便局の統廃合がすすみ、利益の挙がらない地方では政策的に残してゆくということです。こんな民間会社を誰が経営し、誰が株を買うのでしょうか。そもそもビジネスモデルとして破綻しているのです。これらの重要な課題に明確な回答のないままの衆議院可決です。残念としかいいようがありません。
欠陥を抱えたまま民営化を急ぐ理由がわかりません。米国政府が日本政府につきつけている「年次要望書」での郵政民営化の要求を、忠実に実行しましたとポチよろしくサミットでブッシュ大統領に報告したいのでしょうか。いずれにしても、今回の法案の前に、やることは山ほどあります。景気対策や年金改革、さらには北朝鮮拉致問題や日中の外交問題など課題が山積されています。各種マスコミ調査でも明らかなように、国民の多くもそう考えております。生煮えで無理な民営化を急ぐことで失敗するツケ(郵便貯金銀行の破綻による巨額負担など)を私たち国民は払いたくないし、余裕もありません。
舞台は参議院に移るわけですが、しっかり審議をしてもらいたいのと同時に、小泉首相は、衆議院での実質反対多数であった現実と欠陥法案であることを謙虚に受け止め、郵政民営化法案を一旦廃案にし、出直すべきです。税金の無駄遣いなどの歳出改革、税制改革、年金・医療改革、国債調達改革などとあわせた一体改革で「この国のかたち」を明確に示したうえで、じっくりと議論すべきです。
特に、国債・地方債・財投債のファイナンス問題は「この国のかたち」議論と切り離すことはできません。郵貯81兆円、簡保93兆円、郵貯・簡保を主たる原資とした財政融資資金198兆円(旧財投)と実質郵政マネーが国の借金全体の3分の1(平成14年度末)以上を占めていることをどう考えどう改革してゆくかが問われています。本来は、郵政だけを取り上げて民営化を議論すべきではないのです。財政・年金・医療改革・特殊法人改革と合わせた一体改革でなくてはいけないのです。(「財投・郵貯・簡保BS(平成14年度末)」参照)
◆選挙屋と政治屋の茶番
衆議院の郵政民営化法案可決で、一部の自民党反対派議員がマスコミでヒーロー扱いされておりますが、いかがなものでしょうか。確かに、次の総選挙での非公認の脅しに屈せず、信念を貫いたという点では立派でしょう。しかし、その「信念」が問題です。法案が欠陥だからという議員もたくさんいるでしょうが、何人かは、特定郵便局の「票」のために反対している疑念が拭えません。そうした議員は、郵政利権誘導の「選挙屋」ということになります。そこを私たち国民はしっかりと見分けなければなりません。
しかし最も国民を馬鹿にしているのは、反対派議員の集会に参加しながら、脅しに屈し賛成に回った約50人の議員でしょう。マスコミは責任をもって名前をさらすべきです。この約50人は、「票」のために特定郵便局長等の郵政利権に反対のポーズをとりながら、自民党の公認をとりたかったひとたちです。もっとも信用できない政治屋です。
私たちが信用できない人のことを指し「あの人は政治家だよ」というフレーズをよく使いますが、まさに、そうした政治家そのものなのです。これでは、政治不信が増え、投票率は低下するのも無理ないことかもしれません。残念!
◆まずは、当面の改革を!
小泉首相と竹中大臣はなぜ郵政民営化を急ぐのでしょうか。米国は、日本の個人金融資産1400兆円の25%を誇る郵便貯金(230兆円)と簡易保険(120兆円)が、民営化により市場参入や民間となった郵貯や簡保の買収を狙っているとか、小泉首相の旧郵政省に対する積年の個人的恨みがあるとか、いろいろ言われています。この欠陥法案の成立を急ぐ本当の理由は全くわかりません。
しかし、現在の郵便行政に問題があるのもまた確かです。生煮えの課題を無視して一気に民営化するのではなく、当面の改革として、民間との対等な競争の促進(法人税・固定資産税等の徴収)、郵便貯金の預入限度額引下げ、簡易保険の新規加入制限、郵貯・簡保による特殊法人の財投債の購入制限などを行えばよいでしょう。大げさな民営化をしなくても、当面の問題はかなり解決できるはずです。郵政利権も確実に壊れるでしょう。何もわざわざ複雑な改革をしなてもよいのではないでしょうか。ことを複雑にし、国民の理解を曇らせることで新たな「利権」を注入しようとしているのではと勘ぐりたくなります。
民主党が、こうした議論を展開すれば、同じ反対でも自民党の「選挙屋」「政治屋」と明確に区別できます。彼らは上記の郵便局長の世襲禁止などは到底呑めないからです。参議院の議論では、民主党としては、法案の不備・欠陥により賛成できないことを明確にし、わかりやすい当面の対案をまずは出すべきだと思います。

|