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(本コラムは、本日付カッキーブログ記事より転載のうえコラム文体に変更のうえ、大幅に加筆修正しております)
イランの核開発が産油地帯である中東の政治リスクを高めるとの懸念から原油の高騰が止まらない。ニューヨークWTIは過去最高値を更新し終値ベースでも70ドル/バレルを超えた。
小生は銀行時代、原油やエネルギーにかかわる仕事をしていたので、油価高止まりとさらなる上昇を非常に懸念している。無資源国の日本にとって、どのような影響があるのだろうか。
90年代後半には、低油価と円高のため日本の石油開発プロジェクトは非常に厳しい環境にあった。その頃は白油分(ガソリン分など)の高い軽質のWTIでも15ドル/バレルを切っていたし、小生が関わっていた中国産の重たい原油(ガソリン分が少なく重油分が多い)などは10ドル/バレルをはるかに下回っていた。油価が低かったために、石油開発プロジェクトの多くは採算ラインに届かず、当時は石油開発プロジェクトに石油公団を通じて国費を投入するのはおかしいというムードが中心であった。
当時の堀内通産大臣もこうした国内世論を受け、どちらかというと日の丸原油開発に消極的だった。そんななか、尖閣諸島の油田開発についても、当時の通産省は、積極的に開発してゆこうという姿勢はなかった。中国はその間秘かに準備していたかと思うと、今思えば痛恨事である。
それはさておき、現在の油価情勢は石油危機のときとは相違し、サウジアラビアをはじめとするOPECなどの産油国の供給は十分ある。また、今後の供給についても、明確に供給維持をアナウンスしてもいる。しかるに、油価がここまで高騰しているのは、中東情勢による中長期的な供給不安の高まりという政治的な要因に投機マネーがバンドワゴン的に原油市場に流入しているのに加え、米国などの春夏の石油需要増を当て込んでの短期的な「買い」が大きな原因だと思う。
しかし、それにしても高い。
これだけ高くなると、いろいろなことが心配になってくる。
不安1 エネルギー不安
ひとつは、日本の長期的なエネルギー体系(構成)について。
いまでも、日本のエネルギー構成の50%超を石油が占めている。
ここまで高騰し、アジア各国の石油需要も増え、今後大きな石油生産量の増加が期待できない状況(可採埋蔵量100億バレルを超えるような大油田の新規発見は既にほぼ期待できない)で、石油中心ではないエネルギー体系への転換、つまり脱石油がすすまなければ、数年後には、日本のエネルギー調達は相当不安定になってくる可能性がある。
石油比率が高いわけなので、高油価は日本経済に与える影響は非常に大きい。さらには、原油生産が石油需要に追いつかなければ、そもそも石油を調達できるのかという「供給途絶」リスクに直面する。
以前、カネがあれば石油は調達できると豪語していた政治家や著名な評論家がいたが、カネだけで調達できないのが石油という戦略物資である。だからこそ米国は中東に介入するのである。必死にエネルギー多様化と調達先確保をしている中国にくらべ、日本の政治の先見性と危機感のなさ、戦略なく外交にはあきれてしまう。 エネルギー安全保障を含めた安全保障全般について、平和ボケだったといえる。
不安2 金利高騰と国家財政
もうひとつの心配事は金融と財政。経済の需給ギャップがプラスに転じつつあるなか、原油価格の上昇がさらに続けば、企業収益改善の賃金・雇用への反映と相まって、製品価格に転嫁されやすい環境が整うことになる。 長期金利が上昇の傾向をみせるのは当然の成行きである。
こうなると物価上昇圧力が高まり、日銀もゼロ金利を維持することはできなくなるだろう。この傾向が継続すれば夏にはゼロ金利解除をせざるを得なくなるだろう。
そして、当然、長期金利の上昇は国債の利払い費を増加させる。すでに実質1000兆円を超える債務を抱えるわが国にとって、長期金利の上昇はとてつもない国家的危機につながる懸念があるのである。
10年もの国債を仮定すれば、債務の10分の1の約100兆円と新規の債務増加分約30兆円は金利上昇の餌食になる。1%の長期金利の上昇は約1.3兆円の国民負担の増加となる。景気回復による税収増がなければ、それだけ雪だるま式に借金を増やすことになる。往々にして、金利上昇が景気回復のブレーキとなり税収増の足かせとなってしまうことは、政府や政策担当者は留意しなければならないことである。
金利上昇の規模が大きく金利水準が高くなり、長期間にわたれば、日本経済は深刻な打撃を受けることになる。たとえば、長期金利の平均が5%まで高くなり、かつその水準が10年継続する(ここ数年の超低金利のほうが異常だったのである)ことになれば、年間4兆円から後半は6兆円づつ借金が増加してゆく計算になる。
一気に5%まで上昇しその水準が10年継続する仮定では、増える借金額は、1年目は4兆円、2年目は8兆円、3年目は12兆円と雪だるま式に増えてゆき、230兆円近くに達する。仮定はやや乱暴ではあるが、楽観はできない。
これだけ金利が上昇すれば経済への影響もおおきい。投資は、金利上昇の直接影響だけでなく、クラウディングアウト(民間投資に向うべき資金が国債のファイナンスのために奪われていまう)を懸念しなければならなくなる。財政再建に対するニーズが高まれば、国民にさらなる負担増(増税や年金負担増加や医療費引上げなど)を求めることになる可能性もある。
石油エネルギーの限界に金利の上昇。
昔から予想されていたことである。
予想される未来に手を打たないできた政府。
その責任を追及されることはほとんどない。
責任をとらないのが日本の政治であり霞ヶ関。
きっと、金利上昇による借金の増加は増税の理由にするだろう。予想される未来に対する失政と不作為は棚にあげて。
ずっと以前から予想されていた出生率の低下を理由に、平気で国民のつけ回しをする形で年金改悪をしても、担当官僚は普通に出世するし、与党は選挙で負けないのである。負担は国民。
しかし、失政をした与党も悪いが、
選んでもらえない民主党はもっと悪かったのかもしれない。
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